死なないアステア
気づけば今年2017年は、フレッド・アステア没後30年。
そこで、というわけではないですが、以前からずっとモヤモヤと考えていたテーマについて書こうかと・・・まとまるかどうか。
アステアのキャリアの初期から中期を占めるミュージカル作品は、ロマンティックで脳天気でハッピーエンドなものが殆ど(ミュージカルは僕はそれでいいと思っています)なので、今回の考察にはあたらないのですが、後期のドラマ映画、いわゆる「踊らないアステア作品群」を観ていて気になったこと。
フレッド・アステアという男、死なないんです。

●オールスターキャストの有名パニックムービー『タワーリング・インフェルノ』では、名立たる名優がどんどん死んでいく中、最後まで生き残る老詐欺師。
●最晩年作『ゴースト・ストーリー』の主役、往年の大俳優4人のうち3人は死ぬのに、1人だけしぶとく生きてる。
●核戦争後の人々を静かに描く異色作『渚にて』。この孤高の医師役の最期に関しては異論もあるでしょうが、個人的見解としては、迫りくる死の灰の恐怖に屈するというこの作品での「死」に抗って終わるところが、一筋縄では死なない、と。
●傑作なのが、TV映画『俺たちシルバー軍団 Part2』。ネタバレがもったいないので、ご興味が湧いた方は是非ご覧ください。僕などは「ほらぁ、やっぱりぃ!」と手をたたいて笑っちゃいました。
さて、考察というからには何かしらの結論を導かねばならないでしょうが・・・正直なところ、そんなものわかりません。
ただし、です。
「アステアで売る」ことを念頭において製作されたミュージカル映画と違い、ドラマ作品は(おそらく)脚本が先で、それに合わせたキャスティングがされるはず。
年齢や風体の設定が明確な『タワーリング~』には当てはまりませんが、『ゴースト~』の4人の老人は、誰がどの役でも成り立ちそうなものです。その中から4分の1の「あたり」を引くフレッド・アステアという男。
つまりまぁ、そういう雰囲気を持っている、ってことなんでしょうね。

ちなみに、僕のコレクションのコレも、デスマスクではなく「ライフマスク」。生前に取ったものです。息を止めておくの、さぞ苦しかったでしょうにね。。。でも、死なない!
アステアが死んでしまう映画があります。
1939年のミュージカル作品『カッスル夫妻』です。
ただしこちらは、実在の人物の伝記映画的な側面もありましたのでいたしかたのないところ。
(更にミュージカル最終作『フィニアンの虹』(1969年)の最後のシーンも死を予見させるものですが、アステアらしく軽妙洒脱で明るい!)